管楽器リペアマンというお仕事#2〜「見えない不調」を見抜く目と耳〜

吹いてみてもわからない“不調”、あるんです。

「ちゃんと音は出るんだけど、なんだか鳴りが悪い気がする…」
「高音が詰まる」「音程が揺れる」「タンギングが重い」

そんな“微妙な違和感”、あなたも感じたことありませんか?
楽器は壊れていなくても、“ほんのわずかなズレ”で吹き心地がガラッと変わることがあります。

リペアマンの真骨頂は、そんな“見えない不調”を見抜き、整えること。
プレイヤーが気づかないレベルのズレを、目と耳と感覚でキャッチしていきます。

目次

直す前に、聞く。診る。触る。

リペアマンは、いきなり分解したりしません。
まずは話を聞き、音を聞き、目で見て、手で触れる。

「どんなときに不調を感じるのか?」
「吹いてる本人が気づかない癖はあるか?」
「リードの選び方やマウスピースとの相性はどうか?」

いわば“楽器と奏者の健康診断”。
問診から始まり、診断、処方、そして施術――医者のような存在です。


と思いきやその後、分解します。

結局分解します。
でもそれは、「原因が見えたから」。

バネのテンションに違和感?
ネックの奥に水分の痕跡?
タンポがちょっとだけズレてる?

一見“正常そう”に見えても、プロの目には異変が映ります。
「これ、放っておいたら危ないな…」と感じたら、即オペ開始
迷いなくスパッと分解、調整、そして再組立。

その手際の良さに、演奏者は「何が起きたの?」と驚くことも。

クラリネット分解するとこんな感じです。

分解するのは、壊すためじゃない。救うため。

もちろん、やみくもにバラしているわけではありません。
分解にも段階があり、目的があります。

小さな異音の正体を探るには、ネジを外さなければ見えない世界がある。
吹奏感の変化の裏には、1本のバネの位置が関係していることもある。

“調整”とは、感覚とロジックの融合。
リペアマンは「演奏者の求める状態」に寄せていくために、ミリ単位で細部を仕上げていきます。

全ての修理は見ることから始まります。

「直す」ではなく、「より良くする」仕事。

リペアとは“壊れたものを元に戻す”こと――と、思われがちですが、
実際には「元より良くする」ことを目指すのがプロの仕事。

「前より吹きやすくなった!」
「なんか音の抜けが全然違う!」
そんな声を聞くたびに、リペアマンの目はちょっとだけキラリと光ります。


🎤次回予告:リペア工具の世界!
バネひとつ、ネジひとつ。なぜかっこいい工具を使ってるの?
次回は、職人の相棒=工具たちを深掘りしていきます!


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「この症状、リペアで直るの?」
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この記事の著者


管楽器リペアマン

服部 悟

服部 悟(はっとり さとし)
岡山県出身。10代の頃より吹奏楽に親しみ、専門学校卒業後、楽器店勤務を経て独立。
2000年代より本格的に管楽器修理・販売・教育事業に携わり、現在は「株式会社服部管楽器」および関連スクールの代表として、多くの奏者とリペアマンを育成している。

自身の現場経験を活かし、リペア職人の社会的価値向上を目指して活動中。
noteに活動記録あり https://note.com/hattorikangakki

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